XMLマガジン
「ペーパーレス」は何をもたらすか?
電子申請が実現するもの

この記事は翔泳社「XMLマガジン」に掲載されたものです。
電子申請推進コンソーシアム

我々の日常行なっている各種の申請が、インターネット上で行なえるとしたらどれほど便利だろう。この記事ではこの「電子申請」の実用化に向けた、先進的かつ現実的な試みの一端を紹介しよう。

■コンソーシアムの概要
  • 電子申請の将来を見据えたコンソーシアム
    「電子申請推進コンソーシアム」は、ジェットフォーム・ジャパン(株)など20社(2000年8月10日現在)によって作られている、行政への申請・届け出手続きの電子化を推進する任意団体である。コンソーシアムは、電子申請に関する各種情報の提供や、申請の標準化を主な活動としている。

  • 自治体のWebは活用されているのか?
     現在、各自治体が提供しているWebページはどの程度利用されているのだろうか? 電子申請コンソーシアムの資料では、6割の人が自治体のWebを利用していないという報告がされている。「私達が役所に行く理由のほとんどは、転入届や車庫証明といった、届出・申請にまつわるものです」ジェットフォーム・ジャパン(株)の小島英揮氏は言う。「現状では届出や申請を行なう度に、仕事を休んだりする必要があります。これらの作業がもっと手軽になれば、(我々の生活は)もっと便利になるでしょう」

  • PDFで十分なのか?
     中央省庁などのWebページでは、各種申請の書式がPDFや各種ワープロソフトの文書ファイルとして提供されているところもある(図1)。これには、オンラインで書式が提供された場合、各種書類を取り寄せる手間が省けるというメリットがある。
     しかし、書式を取り寄せるというのは、単に配布の手間を削減することでしかない。実際に自治体における窓口申請について調べてみると、作業負担の大部分はまったく別のところにあるという。

  • 重要なのは記入ミスを減らすこと
     それは各種書類の記入に関する部分だ。たとえば、複数の項目から任意のものを選ぶとき、届出書類の記入法では、“必要のない項目を二重線で消す”という記入法が正しく、これ以外の選択法は認められない。このような記載事項のチェックを詳細に行ない、必要に応じて申請者に差し戻すといった作業が必要とされている。これは申請を受ける側にとっても、申請をする側にとっても心理的、物理的負担の大きな作業といえるだろう。

  • ロジックの埋め込まれた帳票
     電子申請推進コンソーシアムで公開されているサンプルでは、このような要求に対するひとつの回答が示されている。
     図2のWebサイトから電子申請のサンプルをご覧になっていただきたい。

     ここでは、JetForm社のFormFlow99を利用した、各種の電子申請を実体験するサンプルが提供されている。右図は年末控除申請のサンプルフォームである。このサンプルでは、サーバーからダウンロードしたActiveXコントロール、電子フォームのテンプレートデータを利用して年末控除申請用紙を提供している。ここで、申請者は自分の契約している保険の種別と金額を入力することで、自動的に控除金額などの計算が行なわれている。

  • 利用者にやさしい利用法
     FormFlow99では、フォームのテンプレートの中に制御コードを埋め込むことができる。これによりユーザーの操作に合わせた正しい申請書類の記入が行なえるようになっている。先の控除金額のような計算も可能であるし、フォーム自体の表記を制御することも可能だ。ユーザーは、フォーム自体の制御にしたがって、必要事項を記入すればよい。記入を終えた申請書類は、受け入れ側の体制によってそのまま電子的に提出することも、一端プリントアウトして紙の書類として提出することも可能だ。
     これは些細なことのように思えるが、じつは非常に重要な点である。フォームに制御構造を埋め込むことによって、作成される申請書の質は飛躍的に向上する。しかも、既存の紙による処理フローはそのままで、申請処理を行なうことができるのだ(図3)。


■XMLによってデザインとデータを分離する
 これのどこにXMLが利用されているだろうか? それはフォームのテンプレートデータと、フォームの入力データ部分である。両者はそれぞれ別のXML文書として保存されている。図2のように入力されたデータを保存したXML文書がリスト1だ。この文書を眺めただけで、どのような項目が保存されているかは一目瞭然である。もちろんインフラさえ整えば、将来的にこのXML文書を申請書類として利用することも可能だ。
 フォームのデータをXML文書として保存することのメリットであるが、たとえば住民票などは、いまの時点で各自治体ごとに体裁の異なる書類が利用されている。しかし、それぞれの住民票のデータに、ほとんど違いが無い。これをXMLを使って、体裁とデータを分離することで、同じデータを使って自治体ごとの体裁にあわせた表示を行なうことができる。
 これは、たとえばA市からB市に転出した場合に、改めて住民票のデータを入力するような手間を省き、元のデータをそのまま利用できるということを意味する。もちろん、各自治体ごとに異なるタグセットを利用していれば、それぞれのタグごとに変換を行なわなければならない。電子申請推進コンソーシアムでは、まさにこの手間を省けるよう、自治体ごとのタグセットを標準化する働きかけを行なっているのだ。
 さらに、もうひとつ忘れてならないのが、XMLが国際的に標準化された規格であるということだ。「XMLの形式であれば、それを利用するアプリケーションの実装にかかわらず利用することができます。自治体で利用するようなデータでは、長期間保存されることが必要です。このような利用法について考えたとき、XMLを利用するということはとても意味のあることなのです」(小島氏)。

リスト1:図2のフォームのデータを格納しているXML文書(抜粋)


<?xml version="1.0" encoding="UTF-8" standalone="yes"?>
<?xfa generator="FF98"?>
<jfxpf:XPF xmlns:jfxpf="http://www.xfa.com/schema/xml-package">
        :
    <xfa:DataGroup>
        <Page1>
            <年度>2000</年度>
            <GRP_個人>
                <氏名>(株)翔泳社</氏名>
                <事業所/>
                <所属/>
                <社員番号/>
                <フリガナ>ショウエイ タロウ</フリガナ>
                <氏名>翔泳 太郎</氏名>
                <給与支払者住所>東京都新宿区舟町5</給与支払者住所>
                <本人住所/>
            </GRP_個人>
                :
            <GRP_一般生保>
                <名称>SE生命</名称>
                <種類>終身</種類>
                <期間>終身</期間>
                <契約者氏名>翔泳 太郎</契約者氏名>
                <受取人氏名>翔泳 花子</受取人氏名>
                <続柄>配偶者</続柄>
                <SeimeiFee1>108000</SeimeiFee1>
                :
            </GRP_一般生保>
                :
        </Page1>
    </xfa:DataGroup>
        :
</jfxpf:XPF>


■「ペーパレス」は実現するのか?
 このように、XMLを利用して体裁と実態を分離することで、電子的な申請への一歩が踏み出されることとなる。本誌の発売される頃には、(株)日本法令とジェットフォーム・ジャパン(株)などのコラボレーションによる電子フォームポータルサービスが開始される見込みだ(図4)。日本法令の持つ膨大な書式の資産が、ここまで紹介してきたようなシステム上で展開されることになる。
 しかし、小島氏は「ペーパーレス」というようなところまですぐに結びつくとは考えにくいという。いままで紙で行なわれていた届出・申請の処理が、いきなり電子的になるのは難しいということだ。「インタラクティブな電子フォームによって、まずはデータの正確な入力と印刷を行なえるようになります。これをそのまま従来のフローに組み入れることで、煩雑な窓口業務が一掃されます。しかも、この方法であれば、従来のフローには全く変更を加えずに済みます」小島氏の言葉のように、段階的に電子フォームの適用範囲を広げてゆくことで、シームレスな電子申請の導入が行なえるだろう。